グリール・マーカス(音楽評論家)は、『暴動』は「モタついていて聞きづらく、何もたたえないつまらないアルバムだ」という有名な批評を残した。つまり、「ノリが悪い」ということだ。これはどう考えても褒め言葉だ。なぜならアルバムの暗いトーンは、文字通り、そして比喩的にもバンド内部の混乱とアメリカの状況を率直に、そして果敢に表現していたからだ。アメリカは60年代後半の覚醒した時代から目を覚まし、70年代前半には暗い失望感に包まれていた。グループ最後のナンバーワンヒットシングル『ファミリー・アフェア』は、酔いから醒めるように『Everybody Is a Star』の前向きな明るさから離れ、替わりにドラムマシンの魅惑的なざわめき音に巧妙に身を隠しながら、人間同士の争いや弱さを思慮深く表現した。1971年のローリングストーン誌のインタビューで、スライは「俺自身は引き裂かれるような気持ちではない」と主張していたが、スライの周りの人たちは、そうでなければ一体何だったのか、と疑問に思った。