映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』:世界各国の良いところを探してまわるエンターテインメントとは

By Peter Travers 2016/06月号 P114〜114 |
(C)2015,NORTH END PRODUCTIONS
アメリカが忘れた大切なことを探しに、マイケル・ムーアが海を渡る。

マイケル・ムーアはヤワになってしまった・・・・
ムーアが世界各国の良いところを探してまわる本作を見て、そんな辛口の意見も出てくるかもしれない。今回は、ムーアがアメリカ軍の統合参謀本部から呼び出しを受ける、という設定で映画はスタートする。そしてムーアは、「海軍の代わりに俺を使ってくれ!」と嘆願。人生を謳歌するすぺを知っているヨーロッバの国々の良いところを『侵略』して、それをアメリカに持ち帰るというミッションを遂行するために海を渡る。

これまで、『ボウリング・フォー・コロンパイン』『華氏911』『シッコ』など、アメリカ社会に映画というミサイルを撃ち込んで問題提起をしていたムーアだが、本作では観客を楽しませるエンタテイナーとして活躍。でも、そんなうわぺを信じてはいけない。かなり笑える映画だが、その裏には痛烈な皮肉が込められているのだ。ヨーロッバを旅するなかで、特にムーアが感動するのがドイツだ。ドイツは過去の恥から逃げていない。今でもホロコーストの記憶を、さまざまなアートや市民フォーラムなどを通じて伝え続けている。一方、アメリカでは、ネイティヴ・アメリカンに対する残虐な勝利や奴隷制度などの過去の汚点は、現在ではほとんど語られることがない。ベルリンの壁の前で、ムーアは人々の抗議の声によって腐敗政権が陥落した事実を思い出すが、重要なのは人道主義であり、アメリカ国家の根幹もここにあったはずだ。そう、ヨーロッパだけではなく世界の国々では、アメリカが作り出したアイデアを『盗んで』いたのだ!きっと世界の人々は、アメリカ人は口では偉そうなことを言っても、それを自分達で実行できないと思っていることだろう。本作はアメリカ人に向けて、アメリカが先に進む道を見つけるには、過去のアメリカを再発見する方が早いのではないか?と問いかける。まさにムーアらしい作品だ。


マイケル・ムーアの世界侵略のススメ
★★★

監督/マイケル・ムーア 出演/マイケル・ムーア
5月27日(金)より、TOHOシネマズみゆき座、角川シネマ新宿ほか全国口—ドショー
http://sekai-shinryaku.jp/
Translation by Shiomi Watanabe

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