5位『バディ・ホリー・ストーリー』(日本未公開)(1978年)

不慮の事故でこの世を去った偉大なテキサスのロッカーを描いたスティーヴ・ラッシュ監督の映画で、バディ・ホリーの曲を全編生で歌い、アカデミー主演男優賞ノミネートにふさわしい熱演を見せた、ゲイリー・ビジーに心から拍手を送ろう。ビジーは、ハリウッドの音楽映画ではそうそうお目にかかれない、正真正銘のロックンロールのエネルギーをこの映画に吹き込んだ。結果、この映画は長く語り継がれ、ディスコ全盛期のアメリカでリスナーがホリーの音楽を再認識することとなった。この映画のヒットにより、グレイテスト・ヒット・コレクション『バディ・ホリー・ライブ』がビルボードのアルバムチャート55位に入った。(DE)

4位『シド・アンド・ナンシー』(1986年)

アレックス・コックス監督による、元セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスがドラッグ中毒に陥り、挙句の果てに恋人のナンシー・スパンゲンを殺害し、ヘロインのオーバードースで死ぬまでの描写は、今見るとパンクというよりプログレだ。この映画の肝は、激しい生生しさではなく、壮大に仕組まれた動きだ(たとえば、空からゴミの雨が降ってくる中でヴィシャスとスパンゲンがゴミ箱にもたれてキスしているシーンのスローモーション)。しかし、ゲイリー・オールドマンが見せたヴィシャスの自己犠牲的なカリスマがあまりに魅力的なので、映画を観てコックスを酷評したピストルズのジョン・ライドンでさえも、その演技を称賛した。そして、クロエ・ウェッブが演じる衝撃的なナンシーは、まさに悪意に満ちたクライドの魂を吸い尽くすボニーだ。(SA)

3位『ザ・シンガー』(1979年)

1977年のキングの早すぎる死から、エルヴィス・プレスリーの伝記映画が何本か作られたが、このジョン・カーペンター監督によるテレビ映画は、いまだ他の追随を許さない。『テニス靴をはいたコンピューター』などディズニーの実写映画で知られる程度だったカート・ラッセルが、キングの暗い情熱をパロディにならずに完璧に捉え、記憶に残る熱演でエミー賞にノミネートされた。ラッセルは映画の中で実際には歌っていない(カントリー・シンガーのロニー・マクドウェルが吹き替えた)が、彼のパフォーマンスのシーンは、プレスリーがステージで見せるパワーと内から湧き上がる興奮を完全に引き出している。この映画は、プレスリーのダークな面も隠すことなく描いており、ラッセルがホテルのテレビを銃で撃つシーンは、エルヴィス本人が出演したどの映画のシーンよりも象徴的かもしれない。(DE)

2位『バード』(1988年)

真実を描いた伝記映画というよりはむしろ、夢のように印象的なシーンの連続といった趣の、クリント・イーストウッド監督がジャズのレジェンド、チャーリー・パーカーへ贈る賛辞は、『バード』と呼ばれた男が創造した革新的な音楽と同じくらい、その短い生涯を形成した(そして破壊した)ヘロイン中毒に焦点を当てている。しかし、フォレスト・ウィテカーが、ビバップの父と称されるパーカーを、彼が創造の過程でほとばしらせる歓喜、情熱、苦悩とともに、歴史に残る名演で再現する。イーストウッドは音楽や環境に妥協を見せない。この映画のゆるぎない魅力のひとつは、見るものをジャズ華やかなりし40~50年代の世界にスリリングにタイムスリップさせる、巧みに演出されたナイトクラブのシーンだ。(DE)

1位『アイム・ノット・ゼア』(2007年)

ロック時代屈指のカメレオン人間、ボブ・ディランの生涯をどうやって一本の映画に収めることができるだろうか。『キャロル』のトッド・ヘインズ監督は、ディランのリッチで複雑なモザイクのバラバラな断片を描くために、彼の人生を異なる時代と影響に区切り、ケイト・ブランシェットからリチャード・ギア、ヒース・レジャー、クリスチャン・ベールまでをキャスティングした。『アイム・ノット・ゼア』は、スリリングで好奇心に満ちていて、年代記や伝記になること、もっと広い意味では、なぜ彼が長年にわたり変身を繰り返すことで世界を作り変えてきたか理解することを許さない。ある面で、この映画は、ゴダールや『ビートルズがやって来るヤァ! ヤァ!ヤァ!』『8 1/2』など、70年代のモダン・ウェスタンのタッチをまねた悪ふざけに過ぎない。しかし、もっと深く見れば、映画が称賛する男と同じくらい力強い、めちゃくちゃで、時に素晴らしい探求を巧妙に作り上げることによって、この映画はこのシンガー・ソングライターに最大級の賛辞を贈っている。(TG)

Translation by Naoko Nozawa

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