プリンス、80年代以降の隠れた名曲15選


『Endorphinmachine』

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アルバム『ゴールド・エクスペリエンス』(1995)より


怒れるロックトラックの終盤、女性ヴォーカルが優しく語りかける。"プリンスは亡くなりました"これに先行する4分間の演奏で、この発言が嘘であることは分かる。攻撃的な曲調で、プリンスのギザギザのギタートーンはエネルギーに満ちている。プリンスの感覚ではグランジ音楽の盛り上がりはおかしなことだった。しかし、この曲のしなやかだが猛烈に攻撃的な音から、プリンスが実は、当時最先端のオーバードライブ気味のギタートーンを積極的に取り入れていたことが分かる。ファンの中には、後にライヴの鉄板となった『Endorphinmachine』が、何度もアルバムに収録されたことを不満に思う者もいたが、彼らはこのアルバムのバージョン以外は無視した。『ゴールド・エクスペリエンス』バージョンが一番良かったからだ。





『Billy Jack Bitch』

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アルバム『ゴールド・エクスペリエンス』(1995)より


かん高いキーボード、うなるようなギター音、"ビッチ!"という叫び声(フィッシュボーンの『Lyin’ Ass Bitch』からサンプリングしループさせた)、主張する管楽器、クレジットはされていないが、レニー・クラヴィッツのコーラスまで、全てが集結した最高のファンクだ。1980年代にプリンスが完成させたテンションの高いダンスミュージックのスタイルだ。ミネアポリスのゴシップ記者、シェリル・ジョンソンは、この曲は彼女がプリンスについての否定的な記事を書いたことへの回答ではないかと疑った。確かに曲は攻撃的ではあるが、歌詞は内省的と言ってもいい。プリンスは「どんな不幸が君の心を傷つけたのだろう?/つまりはこういうことだ/言葉なんてけなしたり幻滅させたりするためにあるようなものだ」





『Loose!』

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アルバム『COME』(1994)より


『Loose!』の原案は、『Glam Slam Ulysses』という"インタラクティヴなミュージカル"のために制作された。大筋はホメーロスのオデュッセイアを基にプリンスが書き、1993年の夏の終わりに彼が経営するミネアポリスのグラムスラム・ナイトクラブで数週間だけ披露された。そして先駆的なこの曲は、『COME』に収録するために復活した。曲の出だしは"1-2-3-4"と数える叫び声だが、プリンスは同じワーナー・ブラザース・レコード所属のボアダムスの曲を聴いていたのかもしれない。この曲の完全に歪んだギターサウンドやシンセサイザー、コーラスを駆使したエレクトロ・ミュージックは、ザ・ナイフなどのアーティストの音楽を予見していた。



Translation by Cho Satoko

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