レオナルド・ディカプリオ、ロングインタヴュー(前編):気候変動問題とレヴェナント制作秘話

By STEPHEN RODRICK 2016/04月号 P126〜131 |
PHOTOGRAPH BY MARK SELIGER

だが何もかもがそこまで真っ暗ではない。今でも若手女優とのつき合いがあり、スキューバダイビングを楽しみ、ウラジスラフ・ドロニンをはじめとする産業界の友人(かつ大型ヨットオーナー)らもいる。悲運に遭った1912年の豪華客船に関する映画に出てくる誰かのように、黄昏へと消えて行くのを恐れているかどうか聞いてみた。

「頑張ってバランスを取ろうと努めているんだ」

─うまくいっている?

「それはまだわからない」

ディカプリオが断りを入れて立ち上がった。もうヘリに乗り込む時間だ。エバーグレーズ湿地がスプロール現象によって受けている影響を調べるのだという。彼が電子タバコを一服するとメープルシロップの香りがして、パンケーキが食べたい気分になった。防寒帽を目深にかぶり、レストランの裏口から出て行く。彼の運転手つきテスラは、ヘリポートに向かって急発進した。その場に残った男が、腕時計のような装置に向かって話す。それを聞いていて、レオナルド・ディカプリオは普通の男ではなく、善にも悪にも利用可能な、生ける商品なんだと改めて思い知った。 

「『パッケージ』はビルを出ました。繰り返します。『パッケージ』はビルを出ました」

今が旬の話題といえば、「レオナルド・ディカプリオは、今年こそ4度ノミネートされながらも逃し続けてきたオスカーを取れるだろうか?」だ。

「もちろん、誰もが認めてもらいたいと思っている。でも、それは自分ではどうにもならいないこと─他の人が決めることさ」。ハリケーンの専門家にインタヴューをする準備をしながら、ディカプリオは言った。「取れれば映画のためになるし、もっと大勢の人に観にきてもらえるだろうね」

『レヴェナント:蘇えりし者』は、飢えた映画評論家にとって食べ放題のアボカドディップのようなものだ。『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のイニャリトゥ監督がメガホンを執り、現役最高といわれるエマニュエル・ルベツキが撮影監督を担当。テレンス・マリック監督をもうならせる映像美を提供している。ただ、ウェストデモインズのシネマコンプレックスで10ドルを支払って夜のデートを楽しもうとする客には、なかなか選ばれないのではなかろうか。映画に登場する女性はふたりだけ。ひとりは殺され、もうひとりはフランス人ハンターたちに輪姦される。156分の大作で、ヒュー・グラス以外の白人は悪行の限りを尽くすだろうことがすぐに判明する。しかしディカプリオの存在が、この地獄絵図にまとまりを持たせている(長いあごひげをつけたディカプリオを見たイニャリトゥ監督は「コイツはどう見てもハンターじゃないか!」と歓喜したという)。ディカプリオは映画の大部分で何もしゃべらないが、そういう役を演じるのは決してたやすいことではない。 

「彼は傷ついた身体、そして両目を使い、6分から8分のテイクの中でさまざまな感情を伝えている」とイニャリトゥ監督は説明する。「自分は寒いんだ、傷を負っているんだ、落ち込んでいるんだ、怒っているんだ、絶望しているんだ、というのを、観ている人に信じ込ませなければならない。ひと言も発することなく、自分の思いや感情を理解してもらわないといけない」。ディカプリオが死んだ息子を見つけ、打ちひしがれる場面がある。だが同時に木の上でカラスが鳴いているのを聞く。死と生に同時に向き合っている彼がそこにいるわけだ。

「彼は自然の一片一片や風と対話し、耳を傾け、それに反応していた」とイニャリトゥ監督は振り返る。「それは最も難しいことだ。彼がそれをやってのけた時、私はこう言った。『コイツは本物だ。彼にはリズムがある。自分のリズムを持っている』」
Translation by Takamune Murase

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