オバマが語る最後の挑戦(後編):気候変動に立ち向かう

By JEFF GOODELL
Photo by Isaac Brekken/Getty Images for National Clean Energy Summit

―先日、スワードの氷河をハイキングしていた時、公園で働く森林レンジャーが「消えてしまう前に氷河を拝みに来る人が増えている」と言っていました。中には、お別れのキスをする人までいるとのことです。また、気候変動の結果、世界がとても急速に変わっていることを知って、悲しみの色が滲んでいる人も多くいたそうです。良くも悪くも、また意識しているかそうでないかを問わず、我々が人間として地球に対して行っていることに悲しみを覚えたりしますか?

世界には一度失われるともう戻ってはこない、驚異的で美しいものが存在する。それを踏まえて活動するべきだ。だが、悲しみに暮れるわけにはいかない。すべきことがあまりに多くあるからだ。世界は絶えず変わっている。私が望まない変化が、我々が生きている間に起きようとしている。だがポリオを撲滅させたり、乳幼児の死亡率を下げた変化もある。そういったものは歓迎すべきだ。

私が経験したもの、見たものの中には、孫の世代が経験したり見たりできなくなるものがあると思う。悲しいことだ。世界は神秘に満ちている。それらの大部分を守る時間はまだあると思う。我々の子供たちは恐らく、また新しい神秘を発見していくことだろう。


オバマ大統領は、氷河の雪解け水をコップに貯めていた(Pete Souza/White House)
正式なインタヴュー後、高校から通りを隔てて設置された防潮堤に沿って我々は歩いた。水位を上げたコツェブー湾から村を守るために造られたものだ(皮肉にも、オバマ政権の景気刺激策に伴う連邦予算で、一部費用を賄って造られた)。灰色の湾は無機質に見え、まだ9月初めというのに冬の気配が既に感じられた。

今回のインタヴューで特に印象に残ったことがふたつある。ひとつ目は、彼がパリで開かれる気候変動に関する国際会議をしっかり見据えていて、他国と多面的なチェスゲームをしながら同盟作りや交渉妥結を進め、2015年の末には有意義な合意にたどり着きたいと考えていること。そしてふたつ目は、彼がどんな交渉をまとめようと、まだ不十分ということだ。今回の周遊で大統領の権威を象徴するたくさんのもの――ジェット機、ヘリコプター、シークレットサービス、地元政治家の低姿勢など――を目にした。

問題の規模や、我々がすべきなのはまさしく"現代生活の基盤に対する再投資"という事実を考えると、彼ほど意欲的で鋭敏な大統領でさえ、我々を正しい方向へ数歩前進させることしかできない。これは長く続く、すべてがかかった戦争なのだ。「私は自分ができることを自分ができるだけやる」。コツェブー湾沿いを散歩していた時、彼は言った。「事の大きさに麻痺してしまうことだけは避けたい。人々にも、どのみち自分の手に負えないと考え、思考停止してしまうことだけは避けてほしい。人間の想像力が問題を解決すると強く信じている。ただ大抵、求められているほど早くは解決されない。"民主主義に万歳二唱"(民主主義は優れているが完璧ではないという思想)のようなものだ。チャーチル(元イギリス首相)の言葉だったと思うが、別のことをすべて試し、他の選択肢がなくなった時にようやく、やっていることは正しいと言える。できればこの問題についても同じであってほしい」


数百メートルほど一緒に歩いてから、オバマ大統領は立ち止まって2011年のアイディタロッド(犬ぞりレース)チャンピオン、ジョン・ベイカーさんと話をした。子犬を抱き上げた大統領は、みやげに野球キャップをプレゼントされた。午後8時半頃、車列は空港へ戻り、大統領はエアフォースワンに乗り込んだ。少人数のアラスカの人々が金網フェンスの向こうから彼に手を振り、さよならを叫ぶ。北極圏滞在は4時間ほどだったが、過去のどの大統領にも成し得なかった貴重な時間だった。エアフォースワンで私が座席に着いた時、大統領は既に機内の会議机の革イスに腰を据えていた。アイディタロッドのキャップをかぶったままだ。そしてスタッフにこう言った。「さあ仕事に取り掛かろう」
Translation by Takamune Murase

TOPICS

RECOMMENDED