オバマが語る最後の挑戦(前編):気候変動に立ち向かう

By JEFF GOODELL
Photograph by Mark Seliger

―1期目のキャップ・アンド・トレード法案の扱いについて、後悔はありますか? 下院は通過していたので、もう少し強引にいけば上院も通せたのではないかという見方も多いようですが。

民主主義のプロセスは苦痛なくらい遅々としている。民主党が多数派である時でさえそうだ。この問題は、圧倒的に多くの民主党議員が支持してくれているとはいえ、どの党員にとっても簡単ではなく、姿勢は一様ではない。上院で議事妨害を起こされては、乗り越えるのは大変だ。

一番の問題は、(2008年の大統領選に共和党候補として出た)ジョン・マケインのような人々が、当初はキャップ・アンド・トレード方式に賛成だったにもかかわらず、私の提案すべてに反対しようと熱を入れすぎ、逆の立場を取るようになったことだ。結果、必要な票数を確保することがあまりに難しくなった。もっと素早く法制化以外の戦略に移るべきだったかもしれない。共和党の支持を少しも得ずに、上院で法案を通せる魔法のようなやり方があったとは思えない。議事妨害のせいで60票も必要になった。

これはたまに私が進歩派とする議論に似ている。彼らは言う。「なぜ景気刺激策を8000億ドルではなく1兆ドルにしなかったのか?」。それに対して“しかし、ニューディール政策よりははるかに規模が大きい”と説明を試みる。これは史上最大の景気刺激策だが、法案を通すためには共和党から2、3の賛成票が必要だった。オバマケアより単一支払者制度を求める人々の主張についても同じだ。我々には政治的制約がある。

この事例から言えるのは一般に、気候変動を現代の重要問題と真っ当に考えている人は、政治を考慮し、いかに問題へ取り組むかを戦略的に考えなければならないということだ。また、必ず大衆を巻き込まなければならない。公衆教育の面では、この数年間で進歩があった。調査結果を見ると、アメリカ国民は気候変動を差し迫った問題と捉えているように思う。ただし、最重要問題だと考えるような水準には達しておらず、近づいてもいない。


―アル・ゴア元副大統領は、気候変動に大きな関心を持っている人は皆、問題の重大さに気づいて「何てことだ!」と叫ぶ瞬間があると言っていました。あなたの場合はどうでしたか?


私はハワイで育った。それは、ここ北極圏で育つのと驚くほど似ていると思う。土地に密着した伝統があって、生態系がどれほど壊れやすいか肌身で知っている。ハワイにはサンゴ礁があるが、私が育った頃はとても生き生きとして魚がいっぱいいた。でも今帰っても昔とは違う。

だから自分の場合は、とりたててそんな瞬間はなかったと思う。2007年から2008年にかけた初期の演説で、我々は既にこの問題について話していたし、重要問題に位置づけていた。大統領としての任期の間、科学レポートを受け取るたび、思ったより時間がなく進行が速いと思い知らされている。おかげでより大きく速く、警鐘を打ち鳴らさなければならないと気づかされた。だが先ほど触れたように、ほんの2、3年前にあった科学データに対する完全な懐疑はほぼなくなったと思う。そういう見方はある意味、一掃できた。

次になされた主張で、今も多くの共和党議員が続けているのが"気候変動は問題としても中国が何もしようとしないのに我々がしても仕方がない"というものだ。私が中国を訪問、共同声明を発表したことで、この主張は大打撃を受けたと思う。

科学技術担当補佐官のジョン・ホールドレンは時々最新データを送ってくる。私はそれを自分で読むだけでなく、上級スタッフ全員にも読ませている。最近のレポートを読んで、今すぐ問題に取り組む必要があり、我々が使えてかつ実効性があるものは何かを考えなければならないと思わされた。

〜後編へ続く〜

米ローリングストーン誌 2015年10月8日号より
Translation by Takamune Murase

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