「ヒラリー・クリントンを大統領に」:ローリングストーン誌創刊編集長ヤン・S・ウェナーが語る大統領選



デトロイトでの雇用消失を理由に、クリントンの「自由貿易」政策支持を非難するサンダースの論点は筋違いだ。デトロイトの衰退は、外国の自動車メーカーが明らかに品質に勝る車を生産・輸出するようになったときに始まった。市場シェアの急減を目の当たりにしたビッグスリーは、競争に立ち向かって品質の改善に取り組むことをせず、ホワイトハウスに外国車の輸入枠を定めるよう求めた。それが逆に、外国勢がアメリカ国内に自社工場を建設してデトロイトに直接対抗する結果につながった。


政策はラフなゲームであり、それはアメリカの歴史を通じて変わっていない。理想主義と誠実さは私にとって決定的に重要な資質だが、私は同時に、強く戦うことを知っている経験豊富な人物を求めたい。これは社会的・経済的公正と、誰が恩恵にあずかって私たちの社会をだめにしているのかという問題に関わる。恩恵にあずかっている人々は、道徳的な正しさという理由だけでは取り分を手放そうとしない。クリントンはタフで、厳しい試練を経てきた戦士である。


選挙には必然的な帰結が伴う。ブッシュは、今なお私たちを苦しめている戦争にアメリカを引き込んだ。ブッシュは富裕層と企業に対する大減税も認めた。中東の和平プロセスを放棄し、大恐慌以降で最悪の金融危機をもたらした。そして、気候変動という切迫した非常事態を完全に放置した。

この選挙には特に大きなものが懸かっている。南北戦争以前からの歴史を通じて未曽有の分岐点だ。右翼勢力の数十年に及ぶ政権獲得への挑戦が今、最高潮に達している。歴史学者のショーン・ウィレンツが、こんな話をローリングストーン誌に教えてくれた。今の下院と上院、そして1カ月前までの最高裁は、「生活、自由、幸福の追求」を高めてきた立法上の前進を何十年も前の状態に引き戻そうとする既得権層と超富裕層の支配下にある。何よりも恐ろしいのは、気候変動と戦おうとする世界の土壇場の努力を彼らが阻止しようとしていることだ。その戦いに文明の運命が懸かっていることを、私たちはもう知っている。


彼らの心の狭さを思えば、クリントンもサンダースも天使の側にいるように思えるのだが、過去数十年の2人の業績を比べれば、選択の答えは明らかだ。歴史の中で今は「抗議票」を投じる時などではないのだ。


クリントンは本選挙での勝算でサンダースをはるかに上回る。予備選でサンダース側に集結している有権者は、11月に民主党に勝利をもたらすのに十分な数ではない。クリントンは確実にそうした人々を引き寄せて、ビル・クリントンやバラク・オバマなど過去の民主党大統領候補がしたのと同じように、広範な連合に彼らを束ね上げるだろう。



経験の厚み、進歩的な変革を実現する能力、本選挙に勝てる候補という点において、明白にして喫緊の選択肢はヒラリー・クリントンだ。


Translation by Mamoru Nagai

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