2016年グラミー賞パフォーマンス総括:最も輝いていたのはケンドリック・ラマー

アデルは『オール・アイ・アスク』のパフォーマンスで音響トラブルに見舞われた。しかし彼女がこの1年、会場内のマイクにお金を費やしてきただけだということを考えると、仕方がない出来事だったように思える。それにこの技術トラブルの間の彼女の驚いた表情は、見ものだった。しかしトラブルに負けない強さこそがアデルの魅力であり、貫禄のパフォーマンスが素晴らしかったことは、現実として受け入れるべきだろう。(後でアデルは「最悪なことって起きたりするのよ。」と話している。)彼女にやり直しのチャンスがあっても良かったとも思う。ガガのボウイ・トリビュートに乱入して、即興で『Life On Mars?』を披露するなんていう光景が見れなかったのは、とても残念だった。

ザ・ウィークエンドのソロパフォーマンスは、ローリン・ヒルが姿をくらました理由が分かるような内容だった。(リアーナは、体調不良で直前でパフォーマンスをキャンセルしている。)またスクリレックス・アンド・ディプロと共演したジャスティン・ビーバーは、今年は涙を見せなかった。そして最優秀ロック・アルバムのプレゼンターを務めたミゲルは、マイケル・ジャクソンについてのスピーチをしている状況に困惑しているように聞こえた。アラバマ・シェイクスはブリタニー・ハワードと一緒に『Don’t Wanna Fight』を披露した。(ちなみにミューズが最優秀ロック・アルバム賞に輝いたが、話題性なし。)そしてピットブルは、タクシーをイメージした衣装に身を包んだソフィア・ベルガラとコラボレーションし、メドレーで大トリを飾った。しかしロビン・シックが登場した時には、プロデューサーたちは時間内にどうにか終わらせようと必死だったようだ。



最も物議を醸したのは、ガガのパフォーマンスだろう。ガガのボウイ・トリビュートは、『スペース・オディティ』で始まり、『アラジン・セイン』のジャケット写真のボウイに変身したガガの顔が画面いっぱいに映し出された。そしてナイル・ロジャースと共に、ボウイのヒット曲10曲のメドレーを大急ぎで駆け抜けたガガは、時折歌うこと以上のパフォーマンスを披露した。この夜ガガは、ボウイが75年にテレビ番組内でシェールとデュエットした時に見せた不屈の精神を呼び起こしていた。その時のデュエットも今回のように、クレイジーなアプローチをしたメドレーだった。ゴチャゴチャしたセットではあったが、ボウイのトリビュートとしてふさわしいステージになっていた。しかし、ボウイの激しさ、熱心さ、幻想的世界、危険さ、大胆不敵さは、ガガにはカバーする時間がなかったように見えた。

ということで、ローリングストーン誌としては、ケンドリック・ラマーの圧巻のパフォーマンスを、もう一度見ることをおすすめする。

Translation by Miori Aien

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE