RCサクセションの『カバーズ』はなぜ発売禁止になったのか

By Joe Yokomizo 2015/06月号 P81〜81 |
石坂敬一 元ワーナーミュージック・ジャパン名誉会長(ローリングストーン日本版2015年6月号掲載)
ローリングストーン日本版 アーカイヴ・インタヴュー
2015年6月号 小特集:表現の自由を規制するのは誰か。音楽編
石坂敬一 元ワーナーミュージック・ジャパン名誉会長

忌野清志郎が反原発を歌った楽曲を収録した『カバーズ』。そしてパンク・ロックにアレンジした「君が代」を収録した『冬の十字架』。この2つのアルバムは、当時所属していた東芝EMI、ポリドールが発売禁止にしたことを知る人は多いだろう。『カバーズ』時に東芝EMIの統括本部長を、そして『冬の十字架』時にポリドールの社長を務めていた石坂敬一。当事者である彼に、発売禁止の真相と、アーティストが自由に表現をするために必要なものを語ってもらった。

─そもそもレコード会社に、歌詞の具体的なNGコードはあるんですか?

ある程度、社内で決めていますが、ソリッドなしっかりしたものではありません。基本的にレコ倫(レコード倫理審査会)の判断に委ねています。

─レコ倫からNGだと言われた場合、法律的に発売できない?

法律的にはできます。ですが、レコ倫の審査で引っかかった場合、アーティスト自体が納得する場合もあるし、だいたいにおいて言うとおりになります。そもそも、レコ倫から『ダメだ』と言われることはめったにないんです。少ないと重みが増すでしょう。

─石坂さんがレコード会社にいたなかで、レコ倫から注意を受けて発売禁止になったものは?

発売禁止ではないけれど、要注意と言われたことはありました。

─具体的にいうと?

それよりも、我々が自主的に判断して発売をやめた大きい出来事があります。まさに表現の問題であったと思うんですが、東芝EMIの時の忌野清志郎の原子力発電の問題。ご存じですか。

─『カバーズ』(※1)ですよね。

あれは私と忌野清志郎が当事者でした。ずいぶん話し合ったのですが、清志郎は『これは必要だから出す』と。けれど、私は『絶対に出せない』と言いました。なぜなら、会社の皆の人生がかかってしまう。親会社の進言でしたから。

─東芝が『これは出せない』と? 

言った。でも清志郎は納得しない。東芝EMIからは出せないので、キティ(レコード)に移って発売したんです。その1枚だけ。

─今、振り返って、石坂さんはその判断をどうお考えですか?

判断は合っていたけれど、思うところはある。ただ、ビジネスマン、サラリーマンの世界では、あれしか答えはないんです。その頃、社長は東芝から来ていましたし、個人的な感情でものを言えない。

─あの時、EMIから出していたら、その後の日本の表現の自由は違う状況になったと思います?

それはあるかもしれません。ですが、資本主義社会のルールでは、大株主である東芝の進言を無視するようなことはできない。そういう意味では、私は間違ってないんです。『出す』と言った清志郎も間違ってない。

─株主の意向で発売中止になったのは『カバーズ』だけですか?

そうですね。それ以外はない。

─例えば、思想団体からクレームが来ることはあるんですか?

ある。だけど、私が関わったもので、実際に来たのは皆無でした。

─日本の場合は、思想団体などの影響よりも、株主の意向のほうが強いということなんですか?

影響はありますよ。私が関わったものでも、そうした問題に触れると思われる例はあります。例えば「君が代」(※2)。

─清志郎さんがカヴァーした?

そう。「君が代」をやりたいというアイデアを持ってきた時、『これはマズいな』と。あの時も彼は『出したい』一辺倒で、結局インディーズから出したんです。

─清志郎さんが「君が代」を歌うことは、何がマズいんですか?

何もマズくない。「君が代」自体、歌詞の内容的にはいいんです。なぜいけないかというと、世の中の流れですよ。発売したらどうなるか。親会社にクレームがいくんですね。クレームは、最も大きい有名な会社にいきますから。
Text by Nanako Kubo (RSJ)

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