細美武士インタヴュー(前編):「子供の頃の傷は乗り越えられない、生きていかなきゃいけない」

By Joe Yokomizo 2015/08月号 P27〜31 |
ローリングストーン日本版2015年8月号掲載(Photo by Keibun Miyamoto)

─俺も30代の前半くらいに鬱で、抗うつ剤を飲みすぎて倒れたんです。それで、当時やってた仕事を辞めたのが書く仕事を始めたきっかけで。細美さんは、どうやって鬱を克服したんですか?

ほっといてもそのうち死ぬからね。それまでにやっておきたいこと、やってみたいことのリストが、やり切れるかわからないぐらい長けりゃいいってだけなんだと思う。

─やりたいことがあったから抜け出せた?

だって世界にはまだ見たことがない景色がいっぱいあるし、喋ったことない人もいっぱいいるし。死ぬのはそれをやってからの方がいいって思えるなんて、すげえ恵まれてるじゃん。

─それで必然的に鬱を乗り越えられたっていうか。

よくわかんないけど。じゃあ「自分、今、鬱なんです」って人に対してかけられる言葉なんか、何もねえし。

─何も言ってあげられないですよね。

うん。俺はそんなに博愛主義者でもないし、結構ドライなんだよ。大事な人が大事なだけだから。そういう意味では、俺は実はそんなに弱くないんだと思う。だけど、自分でどうにもならないことはあるからさ。「別にそれはお前のせいじゃねえじゃん」っていうのは言ってやりたいよね。しょうがねえじゃんって。

─細美さんは、何かがきっかけで強くなったんですか?

うーん。俺はもともとすごい無感情だからさ。

─あえてじゃなくて?

ていうか、まぁよくわかんないよね。自分の魂の形もわからないし、何が正しいのか、何が間違ってるのかも、全然わからないんだよ。ただ衝動だけがある。耳元で囁くんだよね。『こっちへ行け』『これをやれ』って。でも、だいたいその囁くことっていうのは、周りにすごい迷惑をかけることだったりするんだよ。俺たちが持ってる時間は、すごい短いわけじゃん。長生きしたところで80年みてえなさ。その中で20年がかぶってる人って奇跡的なわけで。そこにはいつも感謝してるんだよ。ただ、そこに感謝することと、周りが求める自分になろうっていうのとはまた別で。俺は俺のまま使い道があるんだったら、それがいちばんいいじゃん。曲げずに、よじれたまんまフィットできる場所があれば、それがいい。で、そのよじれた部分をもうちょっと真っ直ぐにすれば、ハマれる所が他にもあるんだろうけど。そうやってハマったってどのみち終わりがあるわけじゃん?言って見れば、今も自分の形はわからないけど、そのイビツな形で生まれたことが、俺の持ってるすべてじゃない? その使いどころはどこなんだろう?っていうのはずっと思う。形を変えるのだけがやり方だとは、どうしても思えないんだよね。

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