夏木マリが語る、時代に媚びない哲学:「やりたいと思ったことは絶対やりたい」

By Joe Yokomizo 2015/06月号 P36〜39 |
Photographs by Maciej Kucia (AVGVST)

─その演劇の時代には、葛藤や悩みはありませんでしたか?

それは、後半ですね。10人演出家がいれば、10人が違うメソッドを言いますから、だんだんわからなくなってきちゃって。アンサンブルプレイにも翻弄されすぎて、好きなのか嫌いなのかもわからなくなってきたし。それで、一度整理してみようと思って始めたのが『印象派』なんです。私が今ここにいるのは、『印象派』によって鍛えられたおかげといっても言いすぎではないと思います。作品創りを通して、自分の中で捨てることや整理することを経験してるし、演劇時代に苦手だった集団のチームワークも取り戻せるようになってきたし『創ることも好きなのかも』と思ったり、いろんな発見がありましたよね。

─「スワサントンブルース」で「あの頃から反省してやっと本気になった40代遅い!」、と歌われる部分ですね。ですが、もの創りはある種孤独な作業でもあると思いますし、おひとりでやり遂げるのは身軽で自由である反面、もちろん大変なこともあるのではないかと思いますが。

そうね、特に『印象派』は。今はチームが大きくなってきて、みんなに助けてもらってますけど、スタートの時は全部自分でやってましたから、気が狂いそうでした(笑)。でも、歌を唄っている時代にも、演劇をやっている時代にも感じなかったもの、何て言うのかな。それをやり終えた時の喜びは、ひとつの達成感があった。これだけ集中するとこれだけ気持ちがいいんだっていうことが、きっと遅まきながらわかったんだと思うんです。だから、今でも続けているんだと思います。やっぱり、私の拠り所でもあるし、もし悩んだりしたら、そこに戻ればいいわけで。『印象派』があることによって、自分のグルーヴ感持てる感じですね。

─拠り所といっても、それは動かない安定した場所ではなく、とてもスリリングな場所なのでは?

そうなの、そうなの。私、体質的に不安定なのが好きで(笑)。安定しちゃうと、なんか、ちょっと、ブスになるような気がして。

─安定するとブスになる!(笑)、はい。

ええ、安定路線が体質に合わないんですね。わざと人が反対するようなことをやりますし。もちろん、『印象派』も反対されたんですよ。「普通に仕事していれば安定しているのに、どうしてそんな大変なことをやるんだ」って友人からは言われましたし。演劇をやっていた時も、「鈴木忠志さんの特殊な演劇をやったら、もう普通の作品には戻れないよ」って言われたんです。確かに、それで今の私は普通の台詞劇より身体を使う演劇が好きなんですね。そういう意味では普通に戻れないんですけど、それは自分の中で清々しいし。自分としては、やって良かったと思ってます。

─ご自分の思いに従っていく、そのフットワークが素敵だなと思います。

何でもやっちゃうから失敗は多いんですよ(笑)、「ああやっちゃった、ポリポリ」みたいな。でも、そのほうが醍醐味があるでしょ、人生の。やらないで平凡にいくよりは、面白いかなと思ってるんです。
Text by Yuko Ueda

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