ニュー・オーダー、ダンスロックへの回帰に成功した内部事情

ニュー・オーダーの10枚目のアルバム『ミュージック・コンプリート』はダンスロックのルーツに回帰している。(Photo: Nick Wilson)

『ミュージック・コンプリート』は、マンチェスター出身バンドのこの四半世紀のなかで最高のアルバムである。バンドはそれができるかどうか、ただ自分自身を再評価する必要があった。

ニュー・オーダーが再結成したのには事情があった。ダンスロックのパイオニアであるバンドは2000年代後半、表向きには活動を休止してきたが、2011年、彼らの友達で『ブルー・マンデイ』や『トゥルー・フェイス』のミュージック・ビデオを監督したマイケル・H・シャンバーグが深刻な病に侵されていることを知った。彼の医療費を稼ぐためにバンドは再結成し、いくつかのギグに出演することを決めた。

現在の再結成時のメンバーは、フロントマンのバーナード・サムナー、ドラマーのスティーヴン・モリス、復帰したキーボード奏者のジリアン・ギルバート(2001年に脱退)、ギタリストのフィル・カニンガム、ベーシストのトム・チャップマンの5人で、バンドはもともとギグ出演を3回だけ行うつもりだった。しかし、59歳で典型的に穏やかな話し方をするサムナー曰く、この再結成は雪だるま式になされたという。「俺たちは3年半、断続的にツアーを行ってきた」と彼はイングランドのマックルズフィールド近くの自宅から話をする。「それがアルバムを制作する機会だと感じた」。

ニュー・オーダーにとって、新曲を収めたアルバムは10年間で初めてであり、バンド結成時のベーシストで2007年に悪態をついて脱退したピーター・フック不参加で作った初めての作品でもある。このアルバムは輝かしい復活であり、1989年のアルバム『テクニーク』以降、最高のアルバムという印象を与える。2000年代にリリースされたギター指向でオルタナティヴ・ロック主体の2枚のフルアルバム以降、今回の11曲を収録したニューアルバム『ミュージック・コンプリート』は、万華鏡のように絶えず変化するシンセサイザーに駆られたダンスロックへの回帰の兆しを見せている。切なく憂鬱なオープニング曲「レストレス」から、楽しくポップなクロージング曲「スーパーヒーテッド」までの間に、弾むようなハウス調のピアノ曲(「ピープル・オン・ザ・ハイ・ライン」)や陰気で詩的な描写の曲(「ストレイ・ドッグ」)、威勢の良いオルタナティヴ・ポップの冒険曲(「ナッシング・バット・ア・フール」)などと曲調は変化に富み、35年目となるバンドが衰えることなく、できるすべてのものを見せてくれる。さらに、イギー・ポップやザ・キラーズのブランドン・フラワーズ、ラ・ルーのシンガー、エリー・ジャクソン、プライマル・スクリームの元シンガー、デニス・ジョンソンらによるゲスト参加は、注意を引く存在になるどころか、上手く調和して曲の質を高めている。このアルバムはタイトルどおり、まさに完成された音楽であり、周到に考え抜かれて作り上げられたものである。


Translation by Shizuka De Luca

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