マーティン・スコセッシ映画ベスト10

5. 『ディパーテッド』
マーティン・スコセッシは、『グッドフェローズ』でアカデミー賞監督賞を獲得することができなかった。その年の監督賞を受賞したのは、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』のケヴィン・コスナー。スコセッシは、『タクシードライバー』でも『ミーン・ストリート』でも『レイジング・ブル』でもオスカーには縁がなかった。そんなアカデミーが初めてスコセッシに賞を与えたのが、07年の『ディパーテッド』だった。スコセッシの最良の作品とは言えないだろう。それでも、アイルランド系マフィアとマサチューセッツ州警察にそれぞれ潜入した男たちの姿が娯楽性たっぷりに描かれる。香港の傑作スリラー『インファナル・アフェア』のリメイクで、次から次へと人が死ぬなか、観客は最後までハラハラさせられる。スコセッシなら眠りながらでも作れそうな1作だが、3億ドル近い興行収入を稼ぎ出すヒットとなり、ここからスコセッシの新たなる快進撃が始まった。

4. 『ラスト・ワルツ』
76年の感謝祭前夜、ザ・バンドはサンフランシスコのウィンターランド・ボールルームで解散コンサートを行った。この日のステージには、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ヴァン・モリソン、エリック・クラプトン、ジョニ・ミッチェル、マディ・ウォーターズ、ニール・ダイヤモンドらそうそうたるゲストが登場した。全世界の音楽ファンにとって幸いだったのは、この日、会場にはマーティン・スコセッシと大勢のクルーがいて、コンサートを最初から最後まで撮影していたことだった。スコセッシはその後1年をかけて、大量のコカインを吸引しながら撮影したフィルムを編集したが、その結果生まれたのが、この史上最高のコンサート映画だ。一方で、ザ・バンドのドラマーだったリヴォン・ヘルムはそうした評価に異を唱えている。ロビー・ロバートソンのバンドへの貢献ばかり取り上げて、リチャード・マニュエルに光を当てていない(マニュエルがリードヴォーカルを務めている時でさえ)というのがヘルムの主張だ。ヘルムの批判にも一理あるかもしれないが、それでも『ラスト・ワルツ』が傑作であることは疑いようもない。

Translation by Mari Kiyomiya

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