2015年注目すべき秀逸アルバム15選 

リアリー・ビッグ・パインコーン 『リアリー・リアリー・ビッグ・パインコーン』
Really Big Pinecone/Really Really Big Pinecone
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「エレファント6界隈」のオリヴィア・トレマー・コントロール、サーキュレートリー・システムやエルフ・パワーにハマっているリスナーなら誰でも、このブルックリンの3人組のローファイなサイケデリック・ポップの解釈を気に入るだろう。
『リアリー・リアリー・ビッグ・パインコーン』はカセット・テープでリリースされているほぼすべての曲が3分以下だが、それぞれにミニチュアの世界が包まれている。『マーキー・デプス』、『アイ・ウッド』や『バックアップ・プラン』の甘く、悲しい小さなメロディが一瞬の合図でトリップ感たっぷりの渦へと吹き飛ばしてくれる。それはマグカップに入れた温かいカモミール・ティーにこっそり何らかの狂気を混ぜたような感覚だ。さらに冒険をしたい気分なら、このアルバムの後に作った『バンドキャンプ』を聴き、なにやら奇妙でアンビエントなノイズ・コラージュに浸ってみると良い。
− Simon Vozick-Levinson

アヌーシュカ・シャンカール 『ホーム』
Anoushka Shankar/Home
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シタール奏者のパンディット・ラヴィ・シャンカールは、演奏によってラーガに透明感をもたらしたことで名高い。彼の娘で同時に弟子でもあるアヌーシュカ・シャンカールは、同じようにうっとりするような澄明感を『ホーム』で聴ける2曲の古典作品にもたらした。2012年の父の死以来の2度目のトリビュートであり、2001年の『ライヴ・アット・カーネギー・ホール』以来の古典のリリースだ。『ホーム』では、美しい旋律と荘厳さを展開した彼女の父親の手による『ラーガ・ジョゲシュワリ』を(ラヴィのタブラ奏者だったタンモイ・ボーズと共に)36分以上にわたってフィーチャーしている。彼女は、69年のウッドストックでラヴィが演奏した情熱的で熱狂的な祝典ともいえる『ラーガ・マンジ・カマージ』を、かつて父がそうしたように「アンコール」として収録している。『ホーム』は、あんぐりする程の名演奏家の楽しみであり、父娘の関係の力強い証言であり、そして、美しい録音によるインド古典伝統音楽への入り口である。
− Richard Gehr

トーヴェ・スティルケ 『キドー』
Tove Styrke/Kiddo
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かつてのティーンの女王(彼女はオーディション番組『スウェディッシュ・アイドル』で第3位だった)は、しばらくの時間を置いてから、男性上位制度に対して異議申し立てをする歌の数々を引っさげて、マス・マーケットへの挑戦を決意し、セカンド・アルバムでカムバックした。
『キドー』は、タイトルをユマ・サーマンの『キル・ビル』での復讐に燃えたサムライ暗殺者からとっており、ピーチズやパティ・スミスからのインスピレーション、そしてブリトニーやビヨンセなども感じることができる楽曲だ。『ナンバー・ワン』(自分自身を見つけ出し、ポップスの頂点へ銃を突き付けることについて歌った曲)に込められた彼女のマニュフェストは、「ビートに合わせたストンプで、馬鹿げたノイズを捨ててよ」だ。そうしたストンプに沿って、骨盤に響くベースに加え、催眠術的なシンセによって、甘さから酸っぱさへと耳をかっさらってゆく。熱狂的なバブルガム・ミュージックである『イーヴン・イフ・アイム・ラウド・イット・ダズント・ミーン・アイム・トーキング・トゥ・ユー』などいくつかの曲では、女性が公の場で自分自身であるための権利を率直に歌っている。傷心をうたったバラードでさえ、暗闇にスリルを求めるのと同じように、肉体と精神の解放を求めている。付き合って聴いてみる価値はある。
− Joe Levy

Translation by Kise Imai

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