注目の「3Dライブ・パフォーマンス」市場とは:ホイットニー・ヒューストン等スター復活の流行を探る

ホログラムUSA社は、競合であるパルス・エヴォリューション社としのぎを削ってきた。パルス社はエルヴィス・プレスリー、マリリン・モンローをカムバックさせる権利を有しており、さらに、セレナの遺産管理財団と契約を結んだことを発表した。ホログラムUSA社は、同社のプロジェクション特許をパルス社が侵害していると起訴。訴訟はまだ決着していない。(※2015年12月現在)デヴィッドはローリングストーン誌に、パルス社の会長ジョン・テクスターを「世界一の大嘘つき」だと語った。一方のテクスターは、「我々が裁判に勝ったことは明確」と語り、ホログラムUSA社のプロジェクション技術を「まだ18歳みたいなもの」と揶揄した。(パルス社の広報担当者は、アルキ・デヴィッドの「嘘つき」コメントに関して、「誤りであり中傷だ」と反論した。ホログラムUSA社の広報担当者は、パルス社が「勝訴した」というテクスターの主張を却下し、「裁判はいくつかの申し立てが係争中で、まだ審議段階だ」と強調。また、ホログラムUSA社は焦点となっているプロジェクション技術について、「絶え間なくアップデートし革新している」と言明した。)

セレブを蘇生させたとして、本当にマーケットとして需要があるのだろうか? 現在のところ、ホログラムによるパフォーマンスはそのほとんどが衝撃度だけで注目されている。だが、音楽業界の関係者の一部は、観客がアーティストにいまだ密接な繋がりを感じていることを、前向きにとらえている。ベテランのブッキングエージェント、デヴィッド・ヴィセッリは「ホイットニー・ヒューストンの復活は、成功する可能性がある」と語る。「でも、バディ・ホリーは無理だろう」

皮肉なことに、現在の段階ではホログラム技術は、専門家がこれぞホログラムだと認める、完全な3次元光造形のものを製作することができない。CGIだと、亡くなったセレブたちの写真と違わぬほどリアルなアニメーションが求められる。近年その精度は画期的に上昇しているが、問題はホログラムに使われるプロジェクション技術が遅れをとっていることだ。

私たちが見るホログラムのほとんどは、実のところ「ペッパーズ・ゴースト」と呼ばれる視覚トリックに現代的な仕掛けを加えただけである。「ペッパーズ・ゴースト」とは150年前に遡るもので、アングルをつけた半透明のプラスチックを通じて見る、2D画像の反射に過ぎなかった。このプラスチックは、3Dプロジェクションのエキスパートで南カリフォルニア大学教授ポール・デベヴェックが言うところの「巨大なサランラップ」だ。

テクスターは、自身の会社が製作しているものをホログラムと呼ぶことさえ好まず、「デジタル・ヒューマン」の呼び名の方が適していると考える。彼は90分のエルヴィス公演を企画しており、「ブロードウェイ舞台のような本格的なストーリーで、ラスベガスのショーのような大規模なスケールになるだろう」と語る。ただし、開幕日はまだ決定していない。

コンピューター処理で描かれる人間はどんどん増えていて、すでにたくさんの例がある。ピーター・ジャクソン率いるWETAデジタルは、亡くなったポール・ウォーカーを『ワイルド・スピード SKY MISSION』に復活させた。また昨年は、3Dスキャンされたポール・マッカートニーが、ビデオゲーム『Destiny』に登場した。

現状、この世にいない人間を呼び戻す主な障害は、適切なクオリティの3D映像がまず必要ということだ。「もし、私が財産管理する人間だったら」と、デベヴェックは語る。「こうアドバイスするだろう。「1日でも歳をとる前に、高解像度で自分をスキャンしておけ。自分を保存するんだ!」」

※この記事は、ホログラムUSA社とパルス・ エヴォリューション社からの返答を反映させて更新した。
2015年12月17日発売『ローリングストーン誌』第1250号のアーカイブから抜粋

Translation by Sayaka Honma

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE