『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が絶大な支持を集める理由

『スター・ウォーズ』が優れているから人々に愛されるのではない。多くの人々に愛されているからこそ、『スター・ウォーズ』は優れているのである。

失われつつあった『スター・ウォーズ』の魅力を蘇らせる最良の方法、それは物語の序章をリメイクすることだったのだ。

『フォースの覚醒』と『新たなる希望』には多くの共通点がある。人里離れた惑星で、身寄りのない若者が重要なメッセージを持つロボットと出会う。その出会いをきっかけに、うぶだった主人公は宇宙の平和を守るヒーローとなる。悪役は人間の心と引き換えに、邪悪な力を手に入れる。クライマックスにおける身近な存在の死、やさぐれたエイリアンでごった返したカンティーナ、そして惑星ほどの大きさの兵器(デス・スターは月よりも大きいとされている)。すべては歴史を作った名作の焼き直しなのだ。『新たなる希望』が新鮮さに欠けるのは、それがポップカルチャーを凝縮したような作品の骨幹をそのまま拝借しているためだ。そして『フォースの覚醒』に驚きがないのは、本作が『新たなる希望』の別バージョンでしかないからだ。

しかし、この優れたストーリーを若い世代に伝えることも、本作の重要な役割のひとつなのだ。映画は架空の物語に現代のリアリティを持たせることができる。人里離れた惑星ジャクーで、住み処としている朽ちたAT-ATウォーカーの側に座ったまま、家族の帰りを待ち続ける少女レイ。お守りにしている古い反乱軍のパイロット用ヘルメットを手にした彼女は、当時の争いがどのようなものだったのだろうと思いを巡らせる。彼女が幸せを感じる瞬間だ。『スター・ウォーズ』の歴史を象徴するヘルメットにレイが抱く敬意の念、それこそが『フォースの覚醒』の核心であり、このシリーズが取り戻すべきものであった。レイと我々に共通するもの、それは『スター・ウォーズ』という架空の物語への憧れだ。ヘルメットを手にした彼女の思いは、スクリーンの前の我々の気持ちと完全にシンクロする。

そのシーンを境にレイの人生は一変する。ヘルメットから発せられる遠い過去から送られたシグナルは、レイを冒険へといざなう。伝説にすぎなかったルーク・スカイウォーカーは、数日後にレイの前に生身の人間として現れる。エピソード9の最後には、おそらく彼女自身がルークになるのだろう。

物語の序章の実質的な「リメイク」である『フォースの覚醒』は、『スター・ウォーズ』の本質を改めて明確にしてみせた。ルーカスは同作のアプローチを「レトロ」と評したが、今作では旧三部作に備わっていたシリーズ本来の魅力が見事に再現されている。ハンがゴミ圧縮機の前で話すシーンなど、単なるファンサービスともとれる不要な場面もあるが、あくまでリメイクに徹することでオリジナルの良さを浮きだたせることに成功している。『スター・ウォーズ』は生き物であり、ハリウッドでフランチャイズ化されるシリーズもののように、時間の経過とともにその魅力が色褪せてしまうことはない。燃え盛るキャンプファイヤーの炎は、あらゆる人々を引き寄せるのだ。

Translation by Masaaki Yoshida

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