ライアン・アダムスが明かすテイラー・スウィフトのアルバムのフルカバーができるまで

アダムスの当初の計画は『1989』の曲をテイラーのアルバムの順番のまま、このアルバムの持つ多様さと流れを守りつつ、違うアプローチを試みるという手法で、レコーディングしなおすことだった。「僕たちはこのアルバムを通して聞いて、それを自分のものにした。そして自分たちでアルバムを作りながら起伏について考えた」と言う。「4曲のアコースティックソングの塊があって、4曲のエレクトリックな曲の塊がある、という形で終わらせたくなかったんだ」

それを念頭に置き、『Blank Space』はバラードに作り変えられた。次のトラック『Style』は跳ねるようなパンク調のポップに、『Bad Blood』は流れるようなアメリカーナに仕上がっている。『How You Get the Girl』はスローダウンしてバラードとなり、『All You Had to Do Was Stay』はテイラーのオリジナルの世界からはまったく離れ、U2が演奏したシンセポップのようになっている。『This Love』ーこの曲はアダムスに90年代に人気を集めたエモのジャウブレイカーを思い出させた—は異なる構成をいくつか経験してから、ミッドテンポのアプローチに落ち着いた。このアルバムからの最初のヒット曲についてはこう語る。「僕はこう思った。『Shake It Off』をソニック・ユースの 『Evol』のバイブにスプリングスティーンかエディ&ザ・クルーザーズのバイブをミックスさせたものにすればとてもいい意味で、極めてダークな作品になるってね」

同時にアダムスはしばしば、ヴォーカルのアプローチを調整しなくてはならなかった。「彼女は僕が持っていないダイナミックな音域を持っている。とても高い音域まで出せるんだ」。そして「歌をより僕の視点から語るため」歌詞にも微調整を加えた。『Style』の「You got that James Dean daydream look in your eye(ジェームズ・ディーンのような夢見るあなたの眼差し)」という部分は「You’ve got that Daydream Nation look in your eye(デイドリーム・ネイションのような夢見るあなたの眼差し)」に変えられた。(「ソニック・ユースに対する尊敬の気持ちを表す機会があれば、どんなものでも飛びつくよ」と彼は静かに笑う。)

2週間のレコーディングを効率的に終え、ミキシングに1週間をかけて、9月初めにアダムスは作業を終え、このフルリメイクを皮肉や斬新な一面は持たない作品として完成させた。どうこれを成し遂げたのだろう。「ただ真面目にやらなくてはならなかった」とアダムスは言う。「もし何か笑えることをしようとしたとしても、僕はそれを真面目にやっていただろう。歌うとき、この曲たちは僕自身のこれまでの曲と同じ意味を持っていた。そうでなかったら歌わなかったよ」

Translation by Yoko Nagasaka

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