ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(後編)

2時間も経たないうちに、私たちは突然アロンゾに起こされる。「嵐が来る!」彼は言う。「移動しなくては!」モンスーンの雨で水浸しになると、ジャングルの泥の道を進むのは難しくなる。私たちはタールで舗装した道路で雨に打たれなくてはならなかった。夜明けには私たちは舗装道路にたどり着く。その頃には、空から海が降るような状態になり、大きな稲妻が私たちの車の中をスタン手榴弾のように照らし出す。アロンゾはケイトに運転するように頼んだ。彼女は退屈を打ち破るチャンスに飛びつき、ベテランのパフォーマーのようにハンドルの後ろに座る。一方でエル・アルトは何も置いていない平らな床の上にさっさと寝転ぶ。彼の寝不足の頭は酸素に飢えていて、土砂降りの雨にも無関心だ。後部座席でアロンゾは私に囁く。この道路には軍の検問所が複数あり、女性が運転している車は手を振って簡単に通す傾向があるという。今回の場合、雨が十分激しかったおかげで、兵士たちは援護のために検問所を捨てていた。幸いなことに私たちは誰からも止められない。小型飛行機に乗って雷に打たれて蒸気と化す危険より、私たちはもと来た街まで車で8時間かけることを選ぶ。エスピノーザは背中を休めようと助手席のリクライニングシートに寄りかかる。

街に到着するまでに、天気は回復していた。私たちは予約していたホテルの部屋でシャワーを浴びる。20分後ケイトとエスピノーザと私は、アロンゾと一緒に2台のタクシーに分乗し、空港に向かう。エル・アルトは一晩快適なホテルのベッドで眠り、翌日出発することを選ぶ。彼の身長よりもゆうに1フィートは短い、硬いカウチに2時間寝た後、平床の上でびしょ濡れになったからだ。アロンゾはメキシコシティを目指した。エスピノーザはヨーロッパだ。ケイトと私はロサンゼルスへ戻るチャーター機に乗り込む。私たちの頭は回っている。今までいた場所に、私たちは本当にいたのだろうか? 一緒にいた人物と共に? 奇妙な夢のように見えた。全計画と旅を経て、どうにかして実際にエル・チャポのところに行き着いたことが、私にはまだ信じられなかった。私は何か説明されないセキュリティ上の理由で私たちの訪問が実現せず、その知らせが穏やかな謝罪と共に届くことを想像していた。そして何も得られずにロサンゼルスに帰ることを。しかしそうはならなかった。

エル・チャポは1月8日、シナロアで発生した軍との銃撃戦の後逮捕された。(PGR)

Translation by Yoko Nagasaka

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