ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(後編)

中東が混乱している現在の情勢で、そこで見られる熱狂した麻薬経済が彼のビジネスにどう影響を及ぼすのかについて私は興味を持つ。私は彼に尋ねる。「ビジネスをしている国や文化の中で一番難しいのはどこだ?」彼は微笑み、首を振るときっぱりと言う。「ないよ」。同じ質問にここまではっきりと、見事に答える政治家はいない。しかし一方で「難しさ」という邪魔を簡単に取り除く世界的な力を持つ実力者にとって、まったく違うものが困難になるのだ。

私の意図を説明する中で、2日間かけて正式なインタビューする機会をもらえるかどうか尋ねた。私の同僚は明日の朝にここを発つ予定だったが、私は会話を録音するために後に残ることを提案する。彼は一瞬黙ってから、答える。「私はあなたに会ったばかりだ。8日後にインタビューを受けよう。8日後に戻ってくることはできるか?」私はできると言う。私は会談が計画通り行われたことを、ローリングストーン誌の編集者に証明できるよう一緒に写真を撮ってくれるよう彼に頼む。「アデランテ(入ってくれ)」彼は言う。私たちはみんなテーブルを離れ、エル・チャポの後についてバンガローの1つに入る。入った瞬間、私たちは武器による重装備の形跡を初めて目にする。私たちは昼白色の壁の前で写真を撮ろうとしたが、壁の反対側にあるカウチの上にはM16自動小銃が横たわっている。私は、写真が証明のためであるから、握手をしながらカメラを見て、しかし笑みは浮かべずに取るのが最適であると説明する。彼は受け入れる。写真はアルフレードの携帯電話で撮影する。それは後日私に送られることになった。

ピクニックテーブルに戻ると、私にはここに来た目的を達成したように思える。私が戻って来たとき2日間のインタビューを受けることに彼が同意したのだ。ドローンによる監視と軍による襲撃という考えが再び脳裏をよぎる。私は改めてテキーラを求め、360度見回す。どこに私と同僚は身を伏せることになるのだろう。私たちが従うべき救援はどこにいて、襲撃はどこから始まるのだろう。暗闇の中で安全な場所を想像するのは難しく、エル・チャポの世界はそれとはほど遠い。

寝ていたエスピノーザが戻ってきたとき、1日の旅の疲れと何杯かのテキーラの慰めに負けたケイトはエル・チャポに寝所へと案内してもらうことを受け入れた。彼とケイトだけが薄明かりの灯るバンガローに歩いていくとき、私は最初、心配する気持ちを抑えられない。私は2人についていくことを提案しようと考える。しかし、ケイトを守ろうとしてどんな行動をとっても無駄だと証明するだけだろう。私の偏執狂的な興奮状態が、侮辱や被害を引き起こす前にチャポが戻ってきた。

しかし変化が生じる。ケイトが居心地のよいベッドへと引っ込んでしまうと、彼と仲間は素早く、ストラップ付きの銃身の長いライフルと腰につける手榴弾で厳重に武装した。ケイトのために、その夜の早い時刻には休みに入っていたジャングルのゲリラの臨戦体勢の部隊は、私が思うにもっと彼ららしい体勢に戻っている。エル・チャポも武器を身につけ、いつでも命令が出せる状態になっている。

Translation by Yoko Nagasaka

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