ドキュメンタリー『キース・リチャーズ:アンダー・ザ・インフルエンス』に見る10の逸話

By Dan Epstein
Keith Richards
「トップレス水泳」で逮捕されそうになったことから、ハウリン・ウルフの家での二日酔いまで。キース・リチャーズのドキュメンタリーで取り上げられた10の逸話を紹介する。


もし「ロックンロールにまつわる夢」のリストを作るとしたら、ほとんどの人が「キース・リチャーズと一緒に過ごすこと」を上位に挙げるのではないだろうか。

実際、このザ・ローリング・ストーンズの伝説のギタリストと一緒にレコードを聴いたり、フェンダーのテレキャスター(できることならディケンズの小説の登場人物の名前がついたアレで)を弾いたり、あるいは「熟練の海賊」が語る半世紀分の冒険譚に耳を傾けたりーそれを望まないロックファンなどいるだろうか?

アカデミー賞受賞ドキュメンタリー『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』で知られるモーガン・ネヴィル監督は、動画配信サービスNetflixのオリジナル・ドキュメンタリー『キース・リチャーズ:アンダー・ザ・インフルエンス』の製作中に、まさにその願いを叶えた。そして、最高に楽しい気分になる80分間の映像を通して、私たちにも同じ体験をする機会を与えてくれた。もともと、15年9月にリリースされたリチャーズの23年ぶりのソロ・アルバム『クロスアイド・ハート』のプロモーションビデオとして構想されたドキュメンタリーだが、最終的にはロックンロールの長老である72歳のチャーミングなギタリストの肖像ともいうべき長編に仕上がった。

ドキュメンタリーには、トム・ウェイツ、バディ・ガイ、スティーヴ・ジョーダン(『クロスアイド・ハート』プロデューサー兼ドラマー)、リチャーズのデビュー・アルバム『トーク・イズ・チープ』に参加したギタリスト、ワディ・ワクテル(エクスペンシブ・ワイノーズ)、そしてリチャーズのギターテックを長年務めるピエール・ド・ビューポートらが登場し、さまざまな逸話を紹介してくれる。だが、何といっても本作は、たくさんの秘話とかき鳴らされるギター、訳知り顔の笑みとしゃがれた笑い声、そして節くれだった指の官能的な動きが堪能できるキース・リチャーズのワンマンショーなのだ。

『キース・リチャーズ:アンダー・ザ・インフルエンス』は、リチャーズの波乱に満ちた半生の記録というよりも、現在の彼のとてもポジティヴな精神状態を捉えたスナップ写真集といった趣きのドキュメンタリーだ。そこでは意図的にリチャーズとストーンズのダークサイドーたとえばオルタモントの悲劇やヘロイン、ブライアン・ジョーンズの死、リチャーズとアニタ・パレンバーグの激動の関係ーへの言及を避けている。タイトルのいう「インフルエンス」も、バーボンやドラッグではなく、あくまでも音楽的な影響に限定されている。実際ネヴィルは、いかにブルースやカントリー、レゲエといった音楽がリチャーズとストーンズに影響を与えているか、その心髄を見事に映像化しており、そしてリチャーズの姿からは、今もなお音楽を作ることが楽しくてしかたないといった喜びが伝わってくる。『キース・リチャーズ:アンダー・ザ・インフルエンス』で知ることができる10の逸話を挙げていこう。

Translation by Mari Kiyomiya

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