アデル インタヴュー(前編):「子供を産まなかったら、私は音楽の世界に戻ってこなかった」

妊娠期間中、アデルは自身のあまりの成功におののいていた。『21』が驚異的な勢いで売れ続ける中、喉の負傷により作品のプロモーションができない期間が続いたことは、とりわけ大きなプレッシャーとなっていた。「人生を自分自身でコントロールできなくなっていくのを感じたわ」彼女はこう続ける。「キャリア面で成功すればするほど、自分だけの時間は奪われていく。小さなクローゼット程度のプライバシーしか与えられていなかったけれど、それでも十分だった。でもそれを失ってしまうことだけは、どうしようもなく怖かったの」

喉の負傷の克服、グラミーでのひとり勝ちを経て、ニューヨークへの移住を検討していた中、彼女は自分が妊娠していることに気づいた。「すべてのプランは予定どおりこなしたわ」彼女はこう続ける。「妊娠していても仕事はできるんだって自分に言い聞かせたの。今思えば、これ以上ないタイミングでの妊娠だったと思う。傍から見れば最悪のタイミングだったんでしょうけど、当時私はあらゆることに不安を覚えて始めていたの」アンジェロの誕生は、その不安をすべて拭い去ったという。「息子を産んだ時、こうあるべきだったんだって思えたの。文字どおり奇跡のような体験だった。ヒッピーみたいだけど、地球を包み込むような計り知れない母性が湧いてくるのを感じたわ」

第54回グラミー賞でのトロフィーを抱えるアデル 2012年2月13日 ロサンゼルスにて(Photo by Kevork Djansezian/Getty Images)

 彼女は何でもないことかのように、こう口にした。
「子供を産まなかったら、私は音楽の世界に戻ってこなかったかもしれないわ」

RollingStone WEB  November 3, 2015

<後編へ続く>

Translation by Masaaki Yoshida

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