70年代のデヴィッド・ボウイを撮った男:ミック・ロックが語るジギー・スターダストとの日々


photo by Mick Rock

あなたの有名な写真の一枚に、1973年にイギリスの列車の中でデヴィッドとミック・ロンソンが仲良くランチを食べているものがあります。この写真はなぜこんなに訴えかけるのでしょう?

わからないな。周囲の状況はありふれているし、食べているものも普通だけれど、彼らは本当に素晴らしく見える。互いを見る視線のせいだと思う。2人はロックンロールというゲームを完全に支配していて、それをわかっている。このとき2人はジギーの最後のツアーを始めたところなんだ。

ときおり、みんなはちょっとした魔法があったことに気がつく。僕はその真っ只中にいたんだ。僕はその場にいたいと思ったし、そこにいるようにも促されたからだ。また当時はとても小さいことだったが、時が経つにつれてそれが大きくなるのを目撃した。デヴィッドはとても素早く行動した。彼はセンスを持っていたし、それを離そうとはしなかった。そして手放すこともなかった。


1973年10月10日リバプールでのステージ(photo by Mick Rock)

1973年以降の仕事でデヴィッドは異なる人格を生きるようになり、他の写真家が撮影しています。でもあなたが撮影したジギー時代のボウイは今でも忘れられないものであり続けています。

あの写真たちには親密さがある。僕は何も意図していなかった。僕は特定のチームに所属する、普通の報道写真家ではない。僕は人々を祝福しているんだ。それが有名人であろうとなかろうと。彼らは出版物にとってではなく、僕にとって重要な人なんだ。そしてもう一つは当時、彼らの多くが僕を自分と同一視していたんだと思う。僕が彼らと自分を同一視していたように。僕は彼らの一員のように見て、語り、行動した。当時は彼らの誰も金を持っていなかった。みんなが若く、そしてカルチャーも若かったんだ。

あなたは明らかに誰よりも先んじて、大ブレイクするデヴィッドを撮影する上でいい時期にいい場所にいましたよね。

今まさにブレイクしようとしている時期だった。僕は自分の本能に従っただけだった。でも同時にみんなに勇気付けられてもいた。特にデヴィッドとルーにね。

あなたが撮影した写真についてデヴィッドは昔を懐かしんだりしましたか?例えばあなたに「これを撮影したなんて信じられない」と言うことはありましたか? 

いや、彼はそういうことは言わない。彼は何に対してもそういう態度は取らないのではないかな。彼は驚くほど自制力がある。彼のことはその行動でわかる。この本の中には彼が許可しなかった写真は一枚もない。そうでなかったら、彼はこの本に名前を連ねなかっただろう。デヴィッドは神に祝福された存在だ。その言葉のあらゆる意味において、彼は素晴らしいアーティストだ。僕はいつも彼を尊敬してきたし、今でもそうだ。これは美しい本だよ。おそらくデヴィッドがこうあって欲しいと思ったものに沿っていると思う。でも彼はそうは口にしない。承認するという態度で示すんだ。だから彼のことはその行動で理解できる。

彼は素晴らしい人物でありアーティストだ。彼の影は長く大きく、そして広範囲に及ぶ。デザイナーであれアーティストであれ、パフォーマーであれデヴィッドを偉大な影響力だと称する人がいる。僕の直感は事実に基づいたものだよ。あの当時、僕はベテランなんてものではなかったけれどね。今の僕はベテランだ。まだ生き永らえているからね。

Translation by Yoko Nagasaka

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