ラナ・デル・レイ『ハネムーン』に隠されているもの

昨年秋に3枚目のアルバム『ハネムーン』をリリースしたラナ・デル・レイ

ポップアイコンへと進化する彼女はアルバム「ウルトラヴァイオレンス」に次ぐ作品を作り上げる過程でデジタルの世界に手がかりを残していった。

たとえ定義し難いとしても、ラナ・デル・レイはポップ界で最も力強い声の持ち主だ。彼女は2014年に、ザ・ウィークエンド、ブライアン・ウィルソン、プロデューサーでシャトー・マーモント(※カリフォルニア州ハリウッドにある城を模したブティックホテル)の常連でもあるエミール・ヘイニーと作品を作ってきた。またティム・バートン監督が高評価を受けた映画『ビッグ・アイズ』のために、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインから指名されて曲も書いている。この楽曲は2015年のゴールデングローブ賞にもノミネートされた。あのテイラー・スウィフトもラナの次の動きに注目している。しかし、このレトロで空気のような雰囲気を持つシンガーソングライターにはどこか捉えきれないところが残っている。

DJゼイン・ロウの番組「Beats1」のインタビューによると、ラナは2014年にリリースしたアルバム「ウルトラヴァイオレンス」を完成させてから今まで、3枚目のアルバム制作をずっと続けてきたという。昨年9月18日に正式にリリースされるまでの1週間で、ローリングストーン誌は貴重なインタビューからビデオクリップ、そしてインスタグラムの写真に添えられた謎めいたキャプションまで、現在出ている情報のすべてをかき集めた。この情報を元にこのアルバムを紐解いてみる。

「ハネムーン」はタイトルトラックでもありファーストトラックでもある。


「私たちは二人とも、私を愛するのなんて流行りじゃないってわかっている/でもあなたはどこにもいかない、なぜなら私以外に誰にもいないってわかっているから」と彼女は歌う。滑らかな弦楽器の現実的な音を取りのぞく前であっても、その声は礎となるルールを定めているかのように飾り気なく聞こえる。

当時、ラナは「Beats1」に、3枚目のアルバムはビーチにインスピレーションを得たものだと語っている。もしこの曲が何かを示唆しているのであれば、おそらくそれは彼女が泳ぐ合間にダフネ・デュ・モーリアの小説をたくさん読んだということだろう。「ハネムーン」は心理的なスリラー小説のように展開する。崩壊の予兆は本物であり、空気に漂う香りのように目には見えない。「ダークブルー、ダークブルー」と序奏部は終わり、次のパートが始まる。「私たちは2人ともあなたを包む暴力の歴史を知っている」とラナは歌う。

ラナは、「私たちのハネムーン」と呪文のように唱えるクリップとともに、歌詞の画像をネット上に公開した。クリップでは一匹のトラが茂みからのんびりと歩いてくる。これはまるで2010年のラナの「ボーン・トゥ・ダイ」のビデオから歩き出してきて新しい作品に入り込んできたかのようだ。「ボーン・トゥ・ダイ」の運命論はラナの新しいハネムーンの夢では暗黙のものになっている。彼女は自分の恋人を「失う定めにある人」とすら呼ぶ。「私はこの歌が好き。なぜなら私にとって当然であることをすべて詰め込んだものだから」と、7月に彼女は自身のウェブサイトでこう語っている。「ある意味で私はこのアルバムがここから始まり、ここで終わっているように感じる」

Translation by Yoko Nagasaka

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