ガンズ・アンド・ローゼズのクレイジーな瞬間50選(前編):1985年〜1989年


1988年2月2日:アクセル、リッツの観客に飲み込まれる

MTVで放映された、現在は閉店しているニューヨークのリッツでの88年のライヴは、きわめて初期のガンズ・アンド・ローゼズの姿を捉えている。その晩のパフォーマンスでもっとも危険だったのが「パラダイス・シティ」で、アクセルがひしめき合う観客の海にダイヴした。その避けがたい混乱から、アクセルは3人の舞台スタッフの手によって引き上げられた。ようやく浮かび上がったアクセルは、シャツを着ておらず、アクセサリーもなく、左手首を気にする様子から判断するに、ひっかかれたようだ。ダフが叫ぶコーラスのハーモニー、そしてスラッシュがステージに寝そべって弾く激しいギターソロなど見せ場も満載で、このデカダンなアンセムのベスト・ライヴ・テイクとなっている。


1989年夏:ザ・スパゲティ・インシデントの真相
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Photo by Jeff Kravitz/Film Magic

ガンズ・アンド・ローゼズの93年のカヴァー・アルバム『“ザ・スパゲティ・インシデント?”』のタイトルは、アクセル・ローズとスティーヴン・アドラーの間に起きたフード・ファイトに由来しているとする説が一般的だが、ダフ・マッケイガンがライターのギャヴィン・エドワーズに語ったところによると、89年にバンドがシカゴに滞在した際、コカイン中毒のアドラーがコカインをしまっていた冷蔵庫の横にバンドのイタリア料理のテイクアウトボックスがあったことに由来するそうだ。「彼は隠してある物を『スパゲティ』と呼んでいました」とマッケイガンは語った。バンドから追放される原因となったドラッグ問題の責任はバンドにあると、アドラーが93年にガンズ・アンド・ローゼズを相手取って起こした裁判の供述調書でも、その言葉が用いられたという。顔色ひとつ変えない弁護士に「スパゲティ・インシデント(スパゲティ事件)についてお聞かせください」と尋ねられたマッケイガンは、あまりに滑稽な質問がおかしくてたまらなかった。これがアルバムタイトルの誕生秘話だ。


1989年:スラッシュ、幻覚を見て血を流しながら裸でゴルフリゾートを駆け抜ける
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Photo by Marc S Canter/Michael Ochs Archives/Getty Images

89年のワールドツアーが終わり、ガンズ・アンド・ローゼズはロサンゼルスで休暇を取った。ジャック・ダニエルズ以外にバンドを縛りつけるものは何もなく、スラッシュのドラッグ問題は悪化した。「それが、89年から91年まで続く、長い悪夢のようなヘロインへの執着への始まりだった」とスラッシュは自伝で述懐している。そして、幻覚を見たスラッシュは、血を流しながら裸でアリゾナのゴルフリゾートを駆け抜けた。ヘロインとコカインを大量摂取した後、「ヘビのようなドレッドヘア」をした「人喰い生物たち」がマシンガンと注射器を持って追いかけてきた、とスラッシュは回想している。怪物と戦おうとして、スラッシュはガラスのドアをぶち破ってくぐり抜け、自室へ逃げ帰った。怯えた裸のスラッシュはメイドを“人間の盾”にして、ホテルのロビーを駆け抜け最後の盾となる芝刈り機の陰に隠れた。彼は警察に人喰い生物の襲撃の詳細を説明したが、「まだハイな状態だったので、冷静に話すことができなかった」そうだ。

Translation by Naoko Nozawa

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