モーターヘッドのレミー・キルミスターが他界 享年70歳:ロックンロールを貫いた人生


「俺は大丈夫さ」キルミスターは8月、ローリングストーン誌にこう話していた。「まだ死ぬつもりはないんだよ」


レミーことイアン・キルミスターは、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのローディーとして音楽業界に足を踏み入れた。バンドのベーシスト、ノエル・レディングとは同じ屋根の下で暮らしたこともある。1972年からの3年間、キルミスターはスペース・ロックバンド、ホークウインドのベーシストとして活動し、代表作である1973年発表のライブアルバム『スペース・リテュアル』でもベースを弾いている。1975年、ホークウインドを追放されたレミーは、自身がヴォーカルを務めるモーターヘッドを結成。そのバンド名はホークウインド在籍時にキルミスターが書いたB面曲のタイトルからとられており、1977年発表のデビュー・アルバムには同曲の別バージョンが収録されている。

「あの曲はホークウインドにいた時に書いたんだ」キルミスターはローリングストーン誌のインタビューでこう話している。「あれはスピードについての曲で、ホークウインドにとってはタブーだった。それで俺はクビになったんだよ。彼らがモーターヘッドのことをどう思っているのかは知らない。どうでもいいからな。でもあの曲『モーターヘッド』が俺たちの代表曲だとは思ってない。どんな曲だったかも忘れちまったよ」

キルミスターの唸るようなベースと唯一無二のヴォーカルは、『キルド・バイ・デス』『ボンバー』『オーヴァーキル』といった、モーターヘッドのシングル曲のバックボーンとなっている。しかし多くのファンにとって、彼らの代表曲といえば1980年発表のスピードメタルのクラシック『エース・オブ・スペーズ』だろう。

「あの曲を演るたびに、歓声に圧倒されるよ」キルミスターはそう話していた。「でも俺たちにとっては、アルバムに収録される曲のひとつでしかなかったんだ。もちろん俺も気に入ってはいたけど、とりわけ優れた曲だとは思ってなかった。だからあの曲を書いた時のこともあんまり覚えてないんだよ」

「ジーン・ヴィンセント、キース・リチャーズ、ジョー・ペリー、俺はそういうワルなミュージシャンが好きだけど、レミーはレベルが違うよ」ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュは2009年のローリングストーン誌のインタビューでこう語っている。「俺が初めてモーターヘッドを観たのは、ブリザード・オブ・オズ・ツアーの時だった。あんなデカい音で演奏するバンドは見たことがなかった。マジでとんでもなかった。頭が吹っ飛んでくんじゃないかって思ったくらいさ。演奏する曲は変わってるかもしれないけど、突っ込んでくる貨物列車のような鬼気迫る感じは今でも変わってないんだ」

モーターヘッドの曲は常軌を逸したテンポの速さで有名だが、彼らは決してヘヴィメタルバンドではないと、キルミスターは主張し続けていた。2010年のインディペンデント紙のインタビューで、レミーは次のように話している。「俺たちはヘヴィメタルバンドじゃない、ただのロックンロールバンドさ。これまでもそうだったし、これからも変わらない。ずっと否定し続けてるにもかかわらず、いまだに大勢の人がモーターヘッドをヘヴィメタルバンドだと思ってる。何で誰もわかってくれないんだろうな」彼は8月に行われたローリングストーン誌のインタビューで、最も影響を受けたレコードはリトル・リチャーズの『グッド・ゴリー・ミス・モリー』であり、また10代の頃にリヴァプールのカヴァーン・クラブで観たビートルズのライブに衝撃を受けたと話している。

Translation by Masaaki Yoshida

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