『原発労働者』著者 寺尾紗穂(音楽家/エッセイスト )インタヴュー:「私は彼らであり、彼らは私である」

By Joe Yokomizo 2015/12月号 P102〜103 |
Photograph by Shiko Watanabe
【連載:SAVE HUMANITY】

音楽家でエッセイストでもある寺尾紗穂が、今年6月に『原発労働者』(講談社)を上梓した。もともと貧困問題に興味を持ち、支援イベントなどを行っていた彼女が原発問題に興味を持ったのは震災前。2011年に、樋口健二の著書『闇に消される原発被曝者』(三一書房)を読んだのがきっかけだった。樋口の後を継ぎたいという思いから原発労働者の取材を開始したのだという。ライヴなどでも原発労働者の問題を伝え続けてきた彼女に、その問題点を通して得たものをきいた。

─原発労働者の方の話で、寺尾さんがいちばん衝撃を受けたのは何ですか?

いちばん始めにお話を伺った弓場(清孝)さん(『原発労働者』第1章に収録)の体験ですね。弓場さんは、中越沖地震の後に柏崎刈羽原発で働いていたんですが、汚染しているかもしれない水を素手で掻き出していたという話が凄くショックでした。2000年代の話なのに、根本的には樋口さんが書いた80年代やそれ以前とぜんぜん労働環境が変わっていないんだなって。

─なるほど。僕はそうしたことも含めて、この本を読んで安全性と効率性の間で現場の方々が人柱のようになってるという印象がすごくあったんです。

労災の問題もそうですよね。実際に現場で事故が起きているのに労災を申請することができない。例えば、現場があまりに暑くてマスクを外して作業をしてしまって、作業員の方が放射能のダストを吸い込んでしまっている。でも、現場の方がそういう主張をしても、上の会社から『どれだけ部屋が暑かったんですか』と聞かれると、同僚の人が『クーラーがきいてて涼しかったです』という証言をするんです。本当のことを言ったら嫌がらせを受けたり、仕事がなくなっちゃったりするから本当のことが言えないんです。結局、多重請負とか、物が言えない構造が変わっていかないと、労災システム自体が本当に無意味だと思うんです。

─僕が衝撃的だったのは、外国人労働者のことです。核燃料プールに落ちた物を拾うのに、一回潜ると非常に高線量の被曝をしてしまうけれど、200万とか300万とかの報酬が出るという......。

詳しくはわからないんですけどね。出版後、本を読んでくれた元請けの企業の方から連絡をいただいたんですが、その方は『外国人労働者はすべて専門職だから、(プールに潜るという)そんな危険な作業をしている人はいません』と言っていました。本当のところはわからないけれど、私は恐らく過去にいたというのは本当なんだろうなと思っています。かなりはっきりした証言を聞いたので。
Text by Nanako Kubo (RSJ) /Photograph by Shiko Watanabe

TOPICS

RECOMMENDED

TREND