細美武士 the HIATUS × スコット&リバース

By RollingStone Japan 編集部

日本発のアーティスト対談企画『MTV ONE on ONE with Rolling Stone』。
今回はthe HIATUSの細美武士とスコット&リバースによる特別拡大版。
細美の親友でもあるスコット、そして憧れのリバースとの対談を2本立てでお届けする。

——ふたりの出会いは結構前まで遡りますよね。2007年、スコットさんのアリスターと細美さんのELLEGARDENで日本全国33カ所をツアーしています。

細美「6年前だ」

スコット「僕にとっても、アリスターのほかのメンバーにとっても、あの3カ月は人生でいちばん楽しい3カ月だった。今でもバンドのメンバーと一緒にいる時に、『あの時、覚えてる?』って当時の話ですごく盛り上がったりする」

細美「あの時、スコットと俺はバスで隣に座ることが多かった。だからメチャメチャいろんな話をして。お互いメンタルに波がある時期だったから、俺が落ち込んでる時はひたすら話を聞いてもらったし、その逆もあった。そんな感じでどんどん仲良くなっていって……俺はあの時のふたりでバスに並んで座っている感じが、青春時代の超いい一コマです」

——スコットさんは細美さんの音楽の変遷を見てきて、どういうふうに感じているんですか?

スコット「僕がいちばん最初に聴いたのはELLEGARDENのアルバム『BRING YOUR BOARD!!』(03年)で、すごくいいと思った。ツアーを一緒にやった時、初めて“スペース・ソニック”を聴いて、本当に感動した。ちょうどあの時、“サラマンダー”という曲のPVのチェックを細美さんがやっていて、その曲も鳥肌が立ったのを覚えてる。あとthe HIATUSもライヴは1回しか観れてないけど、やっぱり細美さんのセンスは……」

細美「細美さんって呼ぶなって」

スコット「今、自分でも言い出して何か気持ち悪い感じだった(笑)」

細美「いつものように武士でいいよ」

スコット「武士、タック、リッグス……」

細美「マーティン・リッグスね。ほら、あの時の打ち上げ。中華料理店で。アリスターの連中が俺のことをリッグスって言い出して。『リッグス、どう?』みたいな」

スコット「(笑いながら)武士が……なんて映画だっけ?」

細美『リーサル・ウェポン』だよ」

スコット「『リーサル・ウェポン』! アハハハ!(爆笑)」

細美「(笑)ホントに大ファンだった!」

スコット「そうだよね! 武士が『リーサル・ウェポン』の大ファンだって知って、そう呼び始めたんだ」

細美「メル・ギブソンね(※メル・ギブソン演じる主人公の名がマーティン・リッグス)。彼の伝記も買ったから」

スコット「アメリカでメル・ギブソンはちょっとダサいんだ。それで英語を勉強したって聞いて、その話がすごく面白くてさ」

細美「それで君らが俺をマーティン・リッグスって呼び始めた。まあ、『リーサル・ウェポン』も俺の青春ですね」

——細美さんはスコットの作る音楽に関してはどうですか? さっきもスコット&リバースの曲を聴いてましたけど。

細美「スコット&リバースに関しては、どうやってふたりで曲を書いてるか知らないから、楽曲のどの部分がスコットの成分で、どれがリバースの成分なのかわからないんだけど、スコットは才能溢れるソングライターですよ。スコットがひとりで書いている曲とかを彼のホテルの部屋で一緒に酒を飲みながら聴いたりして。日本でも『GUILTY PLEASURES』でカヴァーをやってるから、そっちが注目されがちだけど、彼のソングライティング─それもポップなだけじゃないもう少し突っ込んだ曲もすごくいいので、早くそれが形になったものを聴きたいな、と俺はもう何年も待ってる感じです」

スコット「ありがとう。うれしいよ」

——ふたりは海外旅行も好きですよね。アメリカと日本以外で面白かったところはありますか?

細美「俺たちふたりともエジプトへ行ったことがあるよね」

スコット「ああ。エジプトは何もかもがほかとまったく異なる国だ。いろんな経験をしたよ。武士は旅行で最高に興奮する瞬間ってどんな時?」

細美「いちばんエキサイティングな瞬間はたぶん着陸の前だな。飛行機の窓から街を見て、この後の数日間で何が起こるか想像する。なんかワクワクするし、新しいことをするのは何でも楽しいよね。海外に行く時は、初めて英語圏行きましたとか、初めて南国に行きましたとか、初めてイスラム圏行きましたとか、それぐらいが好き。でも幸運なことに、世界中のどこもかしこも家みたいになるほどの時間を我々の人生は与えられていないから、ずっとワクワクしていられるんだと思うし、旅はいつでも行きたいです」

——スコットさんは日本のどんなところが好きですか?

スコット「たくさんあるんだけど、伝統を守っているところ、そしてそれに誇りを持っているところとか。過去のものを維持しながら、それを活かしていく。でもそれと同時に何か新しいもの、新しいカルチャーみたいなものを探っていく。この両方をいっぺんにできる。例えばアメリカ人の場合─国も誕生して200年かそこらだから、僕たちにはそういった残すべき歴史がないんだ」

細美「例えば1000年近く、いやそれ以上昔の寺とか神社が日本にはある。肝心なことは、西洋の文化から新しいものが入ってきたとしても、日本の伝統とは決して交じらないってことだよ」

スコット「でも例えば、いろんな英語の単語が日本語になっていて、日本人はそれを使って話したりする。面白いよね」

細美「俺個人のことだと、なぜだかわからないけど最近になって日本酒を飲むようになったんだよね」

スコット「僕も!(笑)」

細美「スコットの場合は嗜好だろ(笑)。でも俺の場合、日本酒を飲むのがすごく自然だと感じるようになった」

スコット「武士はいつも何というか、すごく日本的な価値観を持ってる。君の英語は完璧だし、グローバルなものの見方をするんだけど、日本人としてのプライドをとても強く感じてると思う」

細美「うん」

スコット「僕がアリスターで来日した時、いろいろ教えてくれたよね。『これは日本の歴史ではこういうことだ』とか、『俺たちが成長するなかで学んだのはこういうことだ』とか。そして、日本人であることにプライドを持っている」

細美「ああ、俺が日本人だということに自分がすごく誇りを感じてるなんて、そのことを知っている人は少ないけど、実際に俺は日本人だってことにプライドを持っているよ」

スコット「君が東北でやっている活動には、感動させられっぱなしだよ。本当に尊敬してる」

細美「ありがとう。こういう日本人の意識っていうのは、小学校、中学校、高校での教育から生まれたわけじゃない。実のところ、ああいう教育システムはすべて大嫌いだ」

スコット「僕は日本の学校に通ったことはないけど、いつも不思議だと思えるのはみんな英語を勉強するだろ、6年間も」

細美「誰も英語を話せないけどさ」

スコット「それってどういうこと?」

細美「ただの陰謀だよ。日本人が英語で意見を言えないままにするための。たぶん俺はあまりにも……」

スコット「陰謀説を唱えているの?」

細美「そのとおり」

——では最後に、今回こういった場で対談してみてどうでしたか?

スコット「今回の対談、最初のうちはすごく奇妙な気がした。ふたりで話してるだけだから。それに武士と日本語で喋ると不思議な感じがするよ。初めて会った時は日本語がうまく喋れなくてさ」

細美「信じらんないよ」

スコット「普段は英語で会話しているから、日本語だとすごくヘンな気がする」

細美「スコットは日本語だと性格が少し変わるような気がする。海外の友人がいつも俺に言うんだ。『英語で話してる時は何だか違う人間みたいだ』って。そういうのって言語が関係しているのかな」

スコット「それって本当だ! 言うまでもないけど、僕の場合は日本語だと自分の言いたいことが100パーセント相手に伝わらない。自分が考えていることが全部出てこないんだ。いまだにそうだよ」

細美「スコット&リバースの歌詞には“一重”とか“二重”とかいう言葉が出てくるじゃない。でもこの単語は英語にはないんだよね」

スコット「そうそう」

細美「しかし今日は楽しかった!」

スコット「今までのインタヴューのなかでいちばんラクだったよ(笑)」

細美武士×リバース・クオモ

リバース「はじめまして」

細美「はじめまして。大ファンです」

リバース「ありがとうございます」

——リバースさんは日本の文化に慣れ親しんでいますが、メイド・イン・ジャパンの物で感心したものはありますか?

リバース「日本に来て最初に感心したものはツメクリッパーかな」

細美「爪きりね」

リバース「爪をキャッチするための小さなケースみたいなものが付いている。天才的だね!」

細美「気配りが行き届いてるんですよね」

リバース「本当に簡単な解決法なんだけど、日本人にしか考えつかない」

細美「でも時々、ちょっとイラッとさせられる。日本のカーナビは『可能ならUターンしろ』って感じでは決して言わない。カーナビはどうやって引き返すのかを丁寧に説明するもんだから、こっちはUターンするのに10マイルほど余計に車を走らせるハメになる」

リバース「面白い」

細美「時々細かすぎるんだよね」

——リバースさんはハーヴァード大学に通っていたことがありますよね。昔から音楽を含めて何かを学習したり調べたりすることが好きだったんですか?

リバース「専門分野を研究することについては複雑な感情を抱いてるんだ。でも一方では、研究していく段階で見えてくるものにすごく魅了されることもある。例えば去年はクリエイティヴィティに関する本を何冊も読んだ。スティーヴン・キングの『小説作法』という本は彼の執筆プロセスがわかって面白かったよ。どんどん夢中になっていって、アイデアをマネしてみたり。だけど半年くらい経った頃、この作家のメソッドは自分にはまったく向いていなくて、正反対のやり方が僕には合っていると気づいたんだ。だから、それまで読んで学んだことをすべて忘れることにした。今は、本も読まず、映画も観ないような状況さ。音楽に関して言えばスコット&リバースとウィーザーの世界に浸ってる。そういう毎日だよ」

細美「ということは、どこからインスピレーションが湧いてくるんですか?」

リバース「ほとんどは自分の内面から生まれてくる。沈滞気味で何も浮かんでこなかったら、自分で何かを創りだす必要がある。そんな状態の時は退屈しているか、悲しいか淋しいってことだから、何かをクリエイトしなくちゃいけない。気分をすっきりさせるためにね」

細美「さっきから会話のなかでそこここに退屈ってワードが出て来るけど、それも音楽をやっている理由のひとつ?」

リバース「うん、間違いなく音楽は退屈さを追いやってくれる。音楽のアイデアが浮かぶとワクワクしてくるんだ」

——さっきスティーヴン・キングの話が出ましたが、細美さんは最近読んだ本で何か面白いものってありました?

細美「今読んでいるのは、日本と韓国や日本と中国の間の政治的境界線について書かれている本」

リバース「日本人が書いた本?」

細美「そうです。長年、外交をやっていた人が書いたものなんだけど、こういった島々は歴史上どの国に帰属しているのかを知りたくて。でもわかったのは、両国の対立に至るプロセスやお互いに主張している見解、その論拠となる外交文書の存在なんかだった」

リバース「クリアにならなかったんだ?」

細美「もともと明確ではなかったことはわかりました。あとはマイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』という本も読んだな。読んだことはあります?」

リバース「いや」

細美「正義の定義に関する本で」

リバース「英語の本?」

細美「オリジナルは英語だけど、日本語のを読みました。たくさんのシチュエーションが提示されてる。例えば『あなたは100人を守るためなら1人を殺すことを選びますか?』とか」

リバース「うわぁ、難しい。で、君はその本をエンジョイしたの?」

細美「うん、最初の半分は」

リバース「僕はそういった答えに苦しむような質問は避けるようにしてる」

細美「そうなんですか?」

リバース「ああ、なんていうのかな、アーティストとしては、すべての観点を捉えるように努力して、正しい方法が何かとか決め付けたりせずに、率直な気持ちを曲の中で表現する─そんな広い心を持つように心がけようと思ってるから。たぶん勇気がないからなんだろうけど」

細美「いや、そんなことはぜんぜんないと思う。僕たちはこういったことを今考えなければいけない状況にあるから。特にあの地震が起きてからはね」

リバース「なるほど」

細美「原子力発電のこともじっくり考えてみなきゃならない」

リバース「政治的な指導者とアーティスト的な考え方のふたつを兼ねるのは難しいだろうな」

細美「いや、かなり難しいよね。でも自分は決してオピニオンをリードする気はなくて、少なくとも賛成か反対かのどちらなのかは、発言するべきだと思ってるだけ」

リバース「君は今、音楽でそういうことを伝えているの?」

細美「ううん。僕が音楽活動を通じてやっていきたいのは、そこにいるみんなを楽しませること。みんなが笑顔になって、笑ったり、跳び回ったり、酔っ払ったり、パーティしたりできるように。どんな状況であろうと、そのきっかけを作りたい。それが自分の仕事だと思うから」

リバース「素晴らしいよ」

細美「ありがとう」

——リバースさんは自分の音楽に今いちばん必要なものは何ですか?

リバース「勇気を持って探求する精神、新しいことにトライする気持ちだね。いかにもウィーザーって曲を作り続けていけば無難だし、楽チンだよ。曲作りもすべてわかりきっているからね。でもそれじゃあ自分自身が物足りないし、ファンも満足してくれないと思う。70点はもらえても90点とか100点はもらえない。『ウィーザー(ザ・ブルー・アルバム)』『ピンカートン』みたいにね。だから僕は新しいものを見つけようと思っているんだ。やり遂げる努力をする必要がある。どうやればいいのか完璧にわかっているわけじゃないけどね。外からの影響を遮断して、自分自身を見つめてみる。ひとりになって寂しいと感じる時間を過ごしてみたり。それに日常生活では、抹茶を飲むようになって……」

細美「尊敬するなあ」

リバース「抹茶を?」

細美「抹茶じゃない(笑)。新しいことを探し求めてチャレンジするという姿勢がね。だって、過去にたくさんのことをやり遂げたのに、それと同じことをやりたくないわけでしょう。それって凄いプレッシャーじゃないですか。昔からのファンのリアクションにはどう対処するんです?」

リバース「90年代の終わりから2000年頭にかけてオンラインが普及し、ファンの反応がリアルタイムでどっさり届くようになったんだ。ポジティヴな反応も、ネガティヴなものもね。よくわからないけど、そういうものにアーティストが対処しなくちゃならなかったんだ。距離を置いて考えることができるようになるまで数年かかったよ。それで原点に戻って自分が本当は何をしたいのか考えたんだ。そういうファンの声に圧倒されていたからね。ところが今はコアなファンは大歓迎って気持ちになった。小さな会場でプレイするのは楽しいよ。特に彼らのようなファンの前で。ライヴの後にバックステージで彼らと会って、新しいデモテープを聴かせて感想を言ってもらったりするのが好きなんだ。時々厳しい意見も出たりするけど、ちゃんと全部を受け止めたいと思ってる。こういうことが自分にとっては大きな刺激になるんじゃないかな。  ウィーザーを結成した頃を思い出すよ。僕たちはLAの小さなクラブでプレイしていて、レコードも発売されていなかった。同じ顔ぶれのファンのために毎週ライヴをやっていると、リアルタイムで反応が返ってくる。今の時代にオンラインで意見が届くのと同じようにね。ステージで新曲を披露すると、どの部分が良くてどこが悪いのかショーの最中にすぐわかる。オーディエンスのリアクションから生まれたコラボレーションがウィーザーのファースト・アルバムのクオリティを高める重要なポイントになったんだと気づいたんだよ。僕はあの頃を再現しようとしているんだ。ファンやオーディエンスと一緒に時間を過ごしながらね」

細美「素晴らしいことだよね」

——そろそろ時間なのですが、今回こうやって話してみた感想はどうですか?

リバース「すごくリラックスできたし楽しかった。とても深くて複雑なアーティスティックなことを理解してくれる人と英語で話せたわけだから。本当に楽しかったよ」

細美「ありがとう。僕もです」

TAKESHI HOSOMI

細美武士 ○ ELLEGARDEN活動休止後、2009年にthe HIATUS結成。ウエノコウジ、柏倉隆史、masasucks、一瀬正和、伊澤一葉、そして細美で形成される有機的な音楽集団として、オルタナティヴ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつも、ジャンル不問の新しい音楽を追求し続けている。昨年はオーケストラを招いたホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を行った。また、2月27日から3rdアルバム『A World Of Pandemonium』がiTunes世界62カ国に配信されている。
»http://thehiatus.com/

SCOTT & RIVERS

スコット&リバース ○ パワーポップ/オルタナティヴ・ロックの名曲を多数持つロサンゼルスのバンド、ウィーザーのギター/ヴォーカル、リバース・クオモ。シカゴのポップ・パンク・バンド、アリスターのベース/ヴォーカルのスコット・マーフィーによるロック・ユニット。昨年末の「COUNTDOWN JAPAN」で日本初お披露目ライヴを行う。4月4日(木)東京・渋谷CLUB QUATTRO、5日(金)大阪・心斎橋Music Club JANUSでライヴ「スコットとリバースと仲間たち」を開催。
»http://www.universal-music.co.jp/scott-and-rivers



INFORMATION

この貴重な対談の模様を映像でもチェック!
スペシャルミニ番組『MTV ONE on ONE with Rolling Stone』
»http://www.mtvjapan.com/oneonone/

 
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【MTV視聴方法】
世界160ヶ国以上で展開する世界最大級のユース向け音楽&エンタテインメント専門チャンネルMTV。日本ではスカパー!、スカパー!e2、全国のケーブルテレビなどでご覧になれます。詳しくはMTVJAPAN.COMまたはMTV HOTLINE(☎044-722-6660/info@mtvjapan.com)までお問合せください。

Text by Takuro Ueno (RSJ)
Photographs by Hironobu Sato

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